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豪雪地帯、かさむ作品維持コスト。芸術祭の課題をビジネスモデルで解決せよ。

2015年夏、株式会社アイスタイルは、新潟県越後妻有(新潟県十日町市、津南町)を舞台とする大規模アートイベント「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015」とのコラボレーションによるサマーインターンシッププログラムを実施しました。

農業を通して大地とかかわってきた「里山」の暮らしが今も豊かに残っている越後妻有。「人間は自然に内包される」を基本理念とした芸術祭は、アートによる地域づくりの先進事例として国内外から注目を集めています。2000年に第1回※を開催して以来、客足を伸ばし続け、2012年の開催では48万人もの来場者を記録。過疎高齢化が進む越後妻有の活性へと結びつきました。
※「大地の芸術祭 アートトリエンナーレ」は3年に一度、開催される。インターシップが行われた2015年は、第6回目の開催。

しかし、越後妻有は日本有数の豪雪地帯ということもあり、開催期間以外の来場客は顕著に少ない上、芸術作品の維持には年間1億円以上の多大なコストがかかります。その課題に対して、何ができるか。地域にかかる負荷・コストを解決し「長く続く芸術祭」を実現する新しい収益モデルの企画立案に、アイスタイル代表 吉松の監修のもと、全3チーム総勢10名の学生が挑戦しました。

内海昭子「たくさんの失われた窓のために」photo: H. Kuratani /大地の芸術祭の里

Contents プログラム内容

プログラム内容の詳細レポートは、アイスタイル HRブログにて公開中です。
あわせてご覧ください。

Works 提案されたビジネスプラン

全3チームの学生から計6プランが提案されました。内容を抜粋してご紹介します。

大地の安心便

プラン概要

災害保険機能つきのお米の定期便。定期便のお米にはご飯1杯につき10円の保険掛金を設定、災害時に十日町市での宿泊を保証。

審査員コメント

「お米の定期便」というだけでもビジネスとして成り立つが、保険という切り口で付加価値をつけた点がおもしろい。越後妻有も災害を経験しており、他の地域での災害時にはサポートしたいという気持ちが住民の間にあるため、実現可能性も高い。加入者の方をどのように優先的に受け入れていくかという点や価格設定については再考の余地があるが、アイディアとしてはすばらしい。

音声ガイドアプリ

プラン概要

地域の方の声で語られる作品解説をスマートフォンで聞くことができる音声ガイドアプリを販売する。アプリを通じて来場者間で感想を共有できる仕組みや、スタンプラリー機能も搭載。

審査員コメント

美術館などでよくある、音声ガイド。あるとないでは作品の見方が変わるので、提供できると良いと思う。地元の人の声という点も独自性があってよい。利用状況データを活用するだけでなく、位置情報やARなどの技術を活用した機能を追加したり、大地の芸術祭にとどまらない各地の芸術祭のプラットフォームにしたりと、おもしろいことができそうな可能性を秘めている。

グッズ販売促進プロジェクト

プラン概要

大地の芸術祭で提供するオフィシャルグッズを商品企画から流通戦略・在庫管理・販売・販促まで統括することで「売れるしくみ」を創りだし、売上向上を図る。

審査員コメント

一人あたりの土産購入額が他の観光地と比較して10倍もの差があるという事実には、はっとさせられた。運営側も問題意識を感じてはいたが、提案していただいたように現状の洗い出しをするところから始めたいと思った。普通のところを改善していくことは重要であると改めて感じさせられた一方で、課題を解決するようなビジネスアイディアの提案があるとよかったように思う。

T-School(妻有ショートスクール)

プラン概要

「得意なことで生きていける人生を」をテーマに、①移住計画、②語学学習、③職業訓練・就労支援、④サマースクールの4部門からなるショートスクール(短期間の学校)を設立。

審査員コメント

ターゲットが異なる事業モデルを盛り込みすぎたという印象。資金や人的リソースが限られたなかで事業として成功させるためには、一点突破のほうが良い。また、取り組み自体は社会的意義のある内容であるし、企業に福利厚生の一貫として活用してもらうというアイディアや、廃校という越後妻有の資源を活かすという点などは工夫されていて良いが、こうしたスクール事業は目新しくはないので、もっと差別化できる内容や仕組みがあると良かった。

美大が魅せる、空き家再生コンテスト!!

プラン概要

出資者からの投資と国の補助金、企業からの協賛金を用いて空き家を修繕する。修繕した空き家それぞれを各美術大学が改修・内装のデザイン等を担当し宿泊施設として運営する。

審査員コメント

「鳥人間コンテスト」のように美大生にとっての登竜門にするというコンセプトはおもしろい。そのマーケティングが成功して話題になれば、インパクトは大きいと思う。ただそれを目指すには、美大側がこれに参加するメリットが少ない。運営側にとっても、既に「泊まれるアート作品」が越後妻有にはあるなかで、あえて取り組む必要性が感じられなかった。結果的にどちらも中途半端になってしまった印象がある。事業をつくる際は「第一に誰にどんな価値を提供するか」を軸に考えると良い。

駐車料金の徴収

プラン概要

芸術祭期間中に、今まで徴収していなかった駐車料金を車1台につき500円徴収する。その代わり車に乗っている人全員にお米を1合ずつプレゼントする。

審査員コメント

こういった発想はなかったので、非常に新鮮で良かった。価格設定など、数字面では見直しが必要な部分もあるように感じたが、芸術祭が抱えている課題と地域の本質的な課題がマッチしているのでぜひやってみたいと感じる。実現可能性も高い。

Voices 関係者によるコメント

十日町市 産業観光部 観光交流課 芸術祭企画係 係長 斎喜 直 様

提案いただいた3チームの6事業は、いずれも越後妻有の課題あるいは資源を的確に捉えており、学生ならではの発想を巡らせた斬新な視点でのビジネスモデルでありました。学生たちの真剣な姿勢や提案は、この地で暮らしながら過疎地域での地域づくりに取り組む私たちにも新たな気づきやポジティブな影響を与えるものでありました。大地の芸術祭実行委員会事務局や行政として事業化へ向けて取り組めることは、積極的に検討を進めていきたいと考えています。3日間の現地研修をはじめ、越後妻有の文化や歴史を学びながら、学生たちが越後妻有の課題解決ヘ向けた事業提案に本気で取り組む姿に感激いたしました。限られた時間の中で彼らが時間をかけて越後妻有のことを本気で考えてくれたこと、そしてアイスタイル様を通じてこの機会をいただいたことに、心から感謝を申し上げます。

NPO法人 越後妻有里山協働機構 原 蜜 様

15年前に越後妻有に関わりだした時には「地域」という言葉でさえ人に伝えるのが難しかった。今回の取り組みを通して、若い人たちにとって「都市と地域」の問題を自分たちの課題として捉えている印象を強くもたされた。他者とのコミュニケーションの取り方が圧倒的に下手になっているとは思うが、価値観の一元化に対しては反発意識があるのかもしれない。言葉もうまく話せない幼い子供が、携帯の画面を流暢にスクロールしている時代の感性や感覚が、1年の半分が雪に覆われ高度成長の流れから振り落とされた越後妻有のような場所でどんな可能性を持ち得るのか?そんなことを考えずにはいられないプレゼンテーションだった。

参加学生 東京大学院 1年生 S さん

今回のインターンシップに参加した理由は、話題になっていた大地の芸術祭を題材に過疎地域でのビジネスを考えるということに興味を持ったからです。本当に現地に根差したものであり、芸術や食べ物、温泉、農業体験など五感で十日町を感じられただけではなく、住民の方、運営しているNPOの方、そして、十日町市長直々に様々なお話を聞くことが出来、インターンという枠を超えて様々考えさせられました。大地の芸術祭に於いて本当に困っている問題を解決するというミッションを背負ったインターンだからこそ、東京に戻ってからの吉松社長のフィードバックも厳しいものでした。よくある単なる新規事業立案のインターンではなく、現場に行き、現場の声を聞いた上で、本当の社会の中で持続可能な実現可能なビジネスを考える貴重な体験になりました。

参加学生 九州大学 3年生 K さん

このインターンは2015年の忘れられない思い出です。私は地域活性化に関心があり、これまで地域のためになるプランを考えたことはあっても、今回のようにここまでしつこく収益モデルを考えたのははじめてでした。インターン中は行き詰ることもありましたが、実際に大地の芸術祭を訪れ、アート・自然・食・人のあたたかさに触れたことは大きく、出会った人たちに喜んでもらいたい、越後妻有の役に立ちたいという思いでプランを考え続けることができました。吉松さんからのフィードバックそして様々なバックグラウンドを持つメンバーとプランをまとめ上げることができました。嬉しかったのは私たちのプランを十日町の方が喜んでくださったこと。ビジネスという手段で地域に貢献するしくみを考えることができたのは、私にとって貴重な経験になりました。

株式会社アイスタイル 代表取締役 兼 CEO 吉松 徹郎

今回のインターンシップの最終アウトプットとして出てきたプランは、企画性はもちろん収益モデルまでよく練られており、いい意味で期待を裏切られました。今回彼らが提案した新しいビジネスモデルや収益化の可能性が越後妻有の未来に貢献できれば嬉しく思いますし、今後においても地方創生のパートナーとして学生という選択肢を提示できたのではと思っています。 日々事業に携わっている私たちは、知らず知らずのうちに経験や知識に捉われ複雑に考えてしまいがちですが、そういったバイアスのないまっさらな視点で学生の皆さんが考えてくれたプランを見て、もっとシンプルに考えてもいいのかもしれないと思わされました。ご協力いただきました十日町市の皆様、NPOの皆様、そして参加学生の皆さんに、改めて感謝申し上げます。

株式会社アイスタイル ヒューマンリソース部 マネージャー 田中 秀平

ひとつの大きな想いがありました。それは世の中に実在する課題に、学生が本気で取り組める機会を作りたい。採用活動の中で1ヶ月も会わないと、物凄い勢いで成長する学生に出会います。自分なりに課題を見つけ、一生懸命取り組んだ結果、顔つきまでも変わり、別人のようです。そんな経験をこのインターンシップを通して体験して欲しかった。参加学生に最初に出会ったのは夏、十日町ビジネスコンテストまでを考えると約半年。見違えるような参加学生の成長振りを見て、本当に今回のインターンシップを実施してよかったと思います。そして、このような私どもの想いにご賛同頂いた十日町市及びNPO法人越後妻有里山協働機構の皆様に心より感謝申し上げます。

Advanced インターンシップのその後

実は今回のインターンシップ、最終日にプレゼンテーションをして終わりではありません。今回学生から提案されたプランのうちいくつかは、地域と芸術祭の課題を解決するため、実現に向けて動き出しています。

また、全6プランを十日町市主催のビジネスプランコンテスト「トオコン2015」の学生部門に応募しました。そのうち2点が本選会に進み、12月19日に十日町市で開催された選考会に参加。「大地の安心便」が学生部門で優秀賞に選ばれました。

「トオコン2015」選考会

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